2018年6月13日 (水)

躊躇、そして葛藤

ロダンの大理石の彫刻が今、横浜に来ている。その名も「接吻」。

以前、パリのロダン美術館で見たもの( 過去の関連記事 )かと思いきや、3体作られたうちのひとつとのことだった。調べると一作目はロダン美術館蔵(パリ万博出展)、二作目がこの英国テートギャラリー蔵のもの(米国人発注後にテートが購入)、三作目はデンマークのビール会社カールスバーグの発注、同美術館蔵だそうだ。

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背中の表現は、まさにミケランジェロに通ずる筋肉フェチ( 過去の関連記事 )。

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今回の展示では360度見て回れる。ロマンチックな題材ながら、女性の背中にもつい筋肉表現してしまうロダン。

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そしてタイトルにもなった「接吻」の瞬間がこちら。あまりよく見えないようにしているのは、作家による時代への気遣いだったのだろうか。

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そして正面に戻って、再び男の手に目をやる。パリでも感じたのだが、これこそこの作品最大の主題にちがいない。力強い男の手とかよわい女性の肌の対比、そこに表れる女性への気遣いと躊躇(ちゅうちょ)、そして葛藤。

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2018年6月 4日 (月)

こいのぼり

300匹ものこいのぼりが大空間を群れで泳ぎ回るというインスタレーションが、先月になるが都内で行われていたので見に行った。

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これらは Adrien Gardere アドリアン・ガルデール というフランスのデザイナーによる空間設計だそうだ。彼はプロダクトなどもデザインしていたけれど、最近ではSANAA建築のルーブル美術館ランス別館のクールな展示( 過去の関連記事 )で有名になった。そういえば昨年、同じ場所でフランスの建築家によるインスタレーション展示があったけれど( 過去の関連記事 )、フランス人のプレゼンテーション能力は今の時代において価値が高まってきているのかもしれない。

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こいのぼりの群れは入口から入っていって、広いスペースの奥で大きく円を描いてターンして出口に向かう流れになっていて、人はその流れに沿って行けば一回り見て出ていける動線計画になっている。その円の中心には寝転べる大きなクッションがいくつも置かれていて、そこで群れを下から仰ぎ見ながら3Dサラウンドで設計された音響によって浮遊感漂う不思議な体験をすることができるようになっている。

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テキスタイルは全て須藤玲子というデザイナーが担当しているそうだ。カラーやパターンだけでなく、透けたものや厚手でゴワゴワのもの、クシャクシャなもの、もじゃもじゃのものなど豊かなテクスチャーのバリエーションを感じることができる。

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やっぱり錦鯉、というか赤いものが一番しっくりくる。この感覚は日本人だけなのだろうか?カッコいい。

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このインスタレーションの為に用意されたのは、国立新美術館の天井高8mという一番大きな展示室。その空間を存分に活かした展示になっている。一番低い群れは人の背丈よりも低く、しゃがんで通り抜けなければならない。

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入口付近の群れは白や生成りの明るい一団。テクスチャ勝負ということで、これはこれで見どころがあって好きだ。

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最後は黒っぽい一群が、光の差す出口の方に向かって去っていく感じ。君たち、ありがとう。さようなら。

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2018年5月25日 (金)

睡蓮

モネは晩年、ジベルニーに建てた自邸の庭に池を造り( 過去の関連記事 )、そこに植えた日本由来の睡蓮を300点にも及ぶ作品に描いている。モネ好きなこともあって今まで何枚もの彼の睡蓮を見てきたが、どの作品も全く飽きること無くその世界に没入できる不思議な魅力を持っている。とは言え、オランジュリーの睡蓮がやっぱり一番だけれど( 過去の関連記事 )。

こちらはスイスの実業家ビュールレが、実は彼は戦争で巨万の富を手に入れた武器商人だったのだが、収集して自邸を飾っていた美術作品が地元チューリッヒの美術館に移管されることになって、そのタイミングで東京で行われていた展覧会に展示されていた睡蓮だ。

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やはりこの作品でも水面に映り込んだ柳の木のゆらぎ、そして更にその奥の青い空の深さを感じることができる。もちろん主題の睡蓮も、特にその赤い花がガッツリと盛って描かれていた。

ちなみに睡蓮は water lily なので、直訳すると水百合。水はわかるけど百合じゃないだろうと思うが、かと言って水蓮と書かないで睡蓮なのはなぜかとの疑問も浮かぶ。調べると、この花は夜になると眠るように花弁を閉じることからつけられたそうだ。へぇ~。

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2018年5月 2日 (水)

ちゃぶ台

昨年見たマティスの絵に、ちゃぶ台のようなものが描かれていた。Wikiによると日本のちゃぶ台は、明治時代に階級社会が崩壊してから普及したとのこと。確かに一家団欒(だんらん)の象徴としてイメージできるように、家長も女性も子供も同じ食卓で食事をするのは、それまでの時代ではありえなかったのかもしれない。一方でマティスは明治元年生まれということなので、場所こそ違えど時代的には符合している。ここはひとつ、描かれているのは日本からヨーロッパへ輸出されたものである説を唱えてみたい。

描かれた女性も床座をしていて、黒髪のせいか東洋的に見えるのも、もちろん作家の意図したことだろう。服のグリーンと手にしたレモンの黄色の組み合わせにも、何か強いメッセージを感じる。

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別の機会に撮ったこのマティスのドローイングも、実に彼らしいすっきりした表現だけど、この女性も何とも魅力的に描かれている。そして東洋的にすら感じるのは、私の気のせいだろうか。( 過去の関連記事

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2018年4月27日 (金)

シルエット

モダンアートか、あるいは前衛の書か、と思わせるこの作品は、何と写真。しかも全てがハンドバッグのシルエットだ。ガラスに並べて下から撮影したのだろうか、なるほど影絵のようで面白い。Dior ( 過去の関連記事 )のアートコレクションにあったものなので、もしかすると全てDiorかもしれないが、残念ながら私にはそのシルエットからブランドを判別することはできない。ちなみにシルエットってフランスっぽいなと思って調べると、案の定 silhouette と書くフランス語だった。

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2018年4月23日 (月)

デルフトの小瓶

東インド会社ついでにもうひとつ。10年以上前に買ったアンティークのデルフトを思い出して、探して出してみた。高さが6~7センチの超小瓶なので、一輪挿しにもなりえない。おそらくは鑑賞用か、昔のお土産用だったに違いない。( 過去の関連記事

しかしその大きさにもかかわらず、絵柄の表現がとても豊かで、線も生き生きしているところが気になったポイントだった。

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実はデルフトにも行ったことがあるのだけど、これはアムステルダム( 過去の関連記事 )の、記憶では運河沿いの薄暗い店で買ったものだ。年代など詳しいことはわからないが、底には奇妙なサインがある。何かの呪文、あるいは漢字のようにも見える。

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ちなみに、その後アムステルダムを訪れた際に、おしゃれなショップで買ったデルフトのカップはこんな感じ。同じ手描きでも、大雑把。まあ、そこがデザインというか、伝統のモダンな解釈なのだろうけれども。

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2018年2月26日 (月)

ドイツ的感性

二次大戦前のアメリカ東海岸で生まれ育ったワイエス Andrew Wyeth。ドイツ系移民の家系で、実際に絵の中でもドイツ系の人たちや彼らのライフスタイルがモチーフとして登場する。彼の描く風景はペンシルベニア州やメイン州の寂しい風情のものが多いけれど、その深いところにはドイツ的な感性が流れているように感じる。

下の写真は Washington National Gallery ( 過去の関連記事 )にあった作品で、それこそメイン州の何気ない風景かもしれないが、まるで長編映画のワンカットのごとく前後にストーリーがあるように感じてしまう。荒野のように広がる殺風景な風景の不穏さ、轍(わだち)が示唆する外界とのつながり、ディテールを追って見ると決して豊かではないであろうことに気付く部屋。そこへ吹き込む乾いた冷たい風を、彼は驚くべき緻密さで描いたカーテンのダイナミックな動きだけで表現している。その激しくはためくカーテンの裾はレース模様を大胆に省略して描いていて、これが現代絵画であることに気づかされる。

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2018年2月16日 (金)

謎のポートレート

気になるポートレート、作者不詳。ポールスミスのコレクションの中で見つけたものなので、UKのアーティストなのかもしれない。そして今頃、どこかの店舗の壁を飾っているのかもしれない。

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これもたぶん、同じアーティストによるもの。もしかして未完成の作品、いや大きさからみてエスキースなのかもしれない。シンプルな面表現にも関わらず、何だろう、この重たい雰囲気は。

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背景の描き方、というか描かずにそこにある空気、いやむしろ気、を表現している様もまたこの作品に奥行きをもたらしている。うーん、「気」になる絵だ。

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2018年2月 2日 (金)

文字のチカラ

アルファベットでできた立体のディスプレイと遭遇した。おそらくレーザーカットされたボードなのだろう、デジタルのようなアナログのような、何とも不思議な存在感がある。そしてなぜか怖い感じがするのは、覆っているものが文字だからだろうか。( 過去の関連記事

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2018年1月19日 (金)

マスターズコレクション

最近 Louis Vuitton はマスターズコレクションということで、100年以上前の絵画作品をモダンアーティストの Jeff Koons が模写し、それをプリントしたバッグなどの商品を出している。昨年はモナリザがあったが、こちらは新作のターナー( 過去の関連記事 )。

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そして、こちらはマネの草上の昼食。その他、モネやゴーギャンもあるようだ。19世紀末の絵画がテーマなのかと思えばブーシェのような古いものもあるし、フランス絵画のシリーズかと思えば英国のターナーもあるし、アーティストの意図が全く読めない。それを含めて、芸術作品を模写してプリントして大量生産して高く売るという活動自体が、もしかするとモダンアートなのかもしれない。

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