2018年12月12日 (水)

ルーベンス

「王の画家にして画家の王」という 安っぽい コピーで今、都内でルーベンス展をやっている。そういやアントワープの大聖堂でルーベンス見たなあ、と思って写真を発掘してみた。そう、日本では40年以上前にアニメ化された「フランダースの犬」で知られている教会だ。ちなみに原作は英国の児童文学で、欧州ではあまり知られていないそうだ。

大聖堂は大きく、アントワープ旧市街ではランドマークになっていた。フランダース地方において最も高い塔、とのことだ。ゴシック芸術の見本のような細工に包まれていて、二次大戦をはじめとした多くの戦禍を乗り越えてきたとは思えない姿だ。

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堂内は広く、意外と明るかった。いかにもゴシックな様式の天井だ。遠くに聖母マリアを祭る中央祭壇が見えているが、ここはアントワープの守護聖人であるマリアを祭る聖母教会のルーツを持っている。

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ネロとパトラッシュが力尽きる前に見たルーベンスの「キリストの降架」は、祭壇中央ではなく、その右側にある専用の台に置かれている。かなり大きく、そしてかなり暗い。丁番で開閉できる三連の祭壇画になっているけれど、逆にこれはいつ閉めるんだろう。まさかアニメのようにお金を払った人だけに開けて見せていたなんてことはないと思うのだが。ちなみに反対の祭壇左側には同じくルーベンス作の「キリスト昇架」があって、それはもともと別の教会にあったものだそうだ。

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うねる、うねる。バロックっぽいダイナミックな構図だ。そしてさすがはルーベンス、人体の描画や表情の表現が異様なほど上手い。それにしても十字架から降ろされるイエスの生気を失った体が、痛々しくてとても見てられない。もちろん宗教観もあるのだろうけれど、私なら死ぬ前に見る絵として選ばないな。

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2018年11月28日 (水)

実験中

銀座のCHANELのビルが長らく外装工事中だったけれど、その期間中の仕立て方が素敵だった。なんと仮設の鉄骨を街灯に見立てて、照明まで点けている。店内(おそらく1階全体がリニューアル)もこういったテーマ仕立てになっていて、外からつながった一連のエクスペリエンスとしてデザインされていた。工事中というネガティブな要素を、ごまかすというよりもむしろ、この機を活かして普段はできない実験にチャレンジするというアクションに、考え方として学ぶものがあるように感じた。

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2018年9月10日 (月)

ガラスブロック

こちらはレンゾ・ピアノ( 過去の関連記事 )設計の銀座エルメスの旗艦店。手前のソニービルが建て替えで無くなっているこの時期に、初めてその全貌を遠景で目にすることができるようになった。

今となっては当たり前になってしまったガラスウオールではなく、重厚感たっぷりのガラスブロックを積んだ(ように見える)外装になっているのが特徴だ。エルメスという伝統的ブランドの表現として、ふさわしい表現ではないだろうか。

外からフロアの構成や階段が、その厚いガラスブロックを通して透けて見えるというのも、構造は全く異なるがブレゲンツで見たズントー設計のミュージアム( 過去の関連記事 )に通ずるものを感じて興味深い。そしてこのデザインは「ランタン」をモチーフにしただけあって、夜になると計算された照明の光が透けて見えて、昼間とは別の美しい表情を見せてくれることになる。写真は撮ってないけど。

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ここの最上階はギャラリーになっていて、時々興味深い企画展をやっている。内側から見ると下の写真のようになっていて、ガラスブロックを使った意図がよく伝わるのではないだろうか。あたかもシンプルにガラスブロックを積んでいっただけの建物に見える構造的工夫と、ちょっと見えにくいけれど、コーナーのラウンド処理に注目頂きたい。

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2018年8月17日 (金)

逸話という価値

浅草から隅田川の対岸を見た風景は、個性を競う建築ばかりの支離滅裂感がどこかアジアっぽく感じる(まあアジアだけど)。今となっては上海か深センあたりの風景と変わらない、なんて言ったら中国に失礼だ、逆に見劣りするほどになった。

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右下に見えているのはバブルの象徴、スタルクのデザインしたアサヒビール本社のオブジェだ。最近のクリーンアップによって本来の輝きを取り戻している。

昔から「金のウン〇」とヤユされているが、自分は同じウンでもどちらかというと孫悟空が乗ってるようなキント雲を昔から想起する。でも実はクライアント企業の情熱を表す flamme d'or すなはち炎とのことだけどね。建築的にこれをつくるのは当時の技術では困難だったのを、造船会社に頼み込んで作ってもらった、という逸話を覚えている。

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今でこそシンプルなデザインが多いスタルクだけど( 過去の関連記事 )、当時はポストモダンの旗手とも言える存在で、尖がったアートっぽい作品を量産し続けていた。下の写真のレモン絞りも、同時期の彼の代表作。こちらは彼がバカンスで滞在していたリゾートで、食事中にレモンを絞っていて閃いて、紙ナプキンにスケッチを描いてALESSIに送ったという逸話がある。彼の作品は逸話が価値でもある、ということか。

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2018年7月16日 (月)

木漏れ日

今年、隈研吾( もうひとつのブログから )による小さなパビリオンが欧州でいくつか作られるようで、そのコンセプトの模型がいくつか展示会に並んでいた。こちらはフランスはプロバンスにできるという、その名も Komorebi(木漏れ日) はシェルター状で、南仏の強い日差しによってできる影を木陰に見立てようというコンセプト。

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上から見ると、こんな感じ。意外とモダンなコンポジションだ。

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一方、イタリアにできるという Kodama(木霊) は、ジャングルジムのような樹を模した球状のデザイン。もしかすると木霊ではなく木玉?

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組木はまるでパズルのような構造になっている。釘や接着剤を使っていないのかもしれないが、組む順序を間違えたりするとやり直しになったりするのだろうか。

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2018年5月16日 (水)

石の船

ロンドンのV&AでおなじみのVictoria and Albert Museum( 過去の関連記事 )の分館が、スコットランドに計画されている。しかもそれは V&A Dundee Museum of Design というデザインミュージアムで、設計は隈研吾 ( もうひとつのブログから )だ。

ミュージアムの分館というのは、欧州ではブームなのだろうか。ルーブルはSANAAによるランス分館( 過去の関連記事 )に引き続き、昨年ジャン・ヌーベル( 過去の関連記事 )によるアブダビ分館ができた。ポンピドゥー( 過去の関連記事 )の分館は坂茂だし、テートの分館( 過去の関連記事 )はヘルツォーク&ド・ムーロンだ。

さてこのミュージアム、都内で隈研吾の建築展をやっていて、そこで迫力ある大きなスケールの模型が展示してあった。ストストーンパネルを水平に積み重ねるというファサードが、あたかも岸壁をデジタルに抽象化したかのような印象だった。あるいは、このミュージアムがウォーターフロントに建てられることから、巨大な船をイメージしたのかもしれない。

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その一部は派手に裂けていて、外へとつながる動線となっている。このディテール以外は、外から見るとあたかも水辺に浮かぶ要塞のように見えるかもしれない。今年9月に開館とのことなので見に行きたい気もするが、島国UKとは言えスコットランドは遠すぎる。。。

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2018年1月10日 (水)

キラキラ

派手な建築が立ち並ぶ銀座の一角に、ファサードがひときわキラキラなビルがあるのだけれど、これはパリに本店がある Van Cleef & Arpels という超高級ジュエリーの店。そして、そのデザインを担当したのが、同じくパリの Jouin Manku という、建築家のジュアンとデザイナーのマンクによる事務所で、ブティックやホテル、レストランなど商業建築を中心に作品を手掛けているそうだ。網目のフレームに対して、サイズが異なるクリスタル状のタイルがランダムに嵌合されていて、そのうちいくつかにはLEDライトが仕組んである。さすがに店内に入る勇気はなかったけれど、やはりキラキラでゴージャスなのだろう。Dsc00314_r

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2017年11月29日 (水)

空間構成

隙の無い空間構成は、コルビュジェの真骨頂。こちらはロシェ邸( 過去の関連記事 )で見たディテイルだけど、シンプルがゆえにバランスに妥協を許さない感じがひしひしと伝わる。結果、部屋のどこから何を見ても均整がとれていて、美しい。

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それはサヴォア邸のディテイルも同じで( 過去の関連記事 )、壁の彩色や採光という一段高まった表現レベルも武器につけながら、質の高い空間構成を実現している。

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備え付けた家具もまた超シンプルで、空間を乱さない。コルビュジェの作品に接する度にいつも感じるのだけど、90年近く前の建築とは全く思えない。

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2017年11月10日 (金)

難民

ここ数年で、中東から数百万人もの難民が欧州に押し寄せる事態になってしまった。しかもあっという間に。その対応の違いからEU各国の溝を深めてしまっていることは報道にあるとおりだ。

そして、地中海を決死の覚悟で渡ってきた難民たちが実際に身に着けていたライフジャケットを素材としたインスタレーションが、横浜美術館のファサードを覆っていた。これは中国の、今では社会派アーティストと呼んでもいいだろう Ai Weiwei によるもの。

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これを身に着けた人は家も財産を失い、場合によっては家族をも失い、決死の渡航に高額の報酬をブローカーに搾取され、命かながら逃げて欧州にたどり着いている。それぞれ今、どこでどんな生活をしているのだろうか。

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そこで使われたゴムボートも、丹下建築のファサードに容赦なく並んでいる。その後ろにそびえ立つ墓石とも揶揄されたランドマークタワーの無機質なデザインと、この命のシンボルとなった赤いゴムボートとのアイロニカルなコントラストも、アイウエィウエィの狙ったところなのだろうか。

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2017年4月19日 (水)

ミュージアム巡り191 ダイナミック

久しぶりのミュージアム巡りはアメリカ編になってしまうが、サンフランシスコの SF MOMA というミュージアム。NYのMoMAとは関係が無い。この建築のオリジナルは巨匠マリオボッタで、マリオベリーニ( 過去の関連記事 )同様に私にはバブル期のポストモダンの空気を感じてしまう。90年代にオープンしたての頃に何度か来たので、当時の時代感が強烈に染みついているからなのだろうけれど。彼は、マリオという名前からも建築の作風からも勝手にイタリア人だと思い込んでいたのだが、調べてみるとスイス人でイタリア国境近くの出身だそうだ。

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サンフランシスコのダウンタウンの、しかも混みいった地区に立つこの美術館は、なかなか全体像を俯瞰することが難しい。唯一、同時期に作られた隣接する公園から正面を見通せるようになっている。その特徴になっているストライプ模様で円筒形になっている部分は、ちょうどエントランスホールの吹き抜けになっていて、そこから見上げるとこんな感じだ。

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そこにぶら下がっているのは、アメリカの現代彫刻家カルダーの巨大なモビール。やはり彼のダイナミックな作品は、こういった大きな空間にこそ似合う。( 過去の関連記事

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この美術館は昨年、建物の奥にあたる部分を増築している。北欧の建築設計事務所 Snøhetta (スノヘッタと読む)による、ちょっと変わったファサードだ。

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うねってる、というかシワがよっている感じ。これは図面化は不可能で、3Dデータなしでは実現できなかっただろう。マリオボッタの本館が構築的な印象なのに対して、こちらは流れるようなダイナミックさをアンチテーゼとしたのかもしれない。

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その新館部分の裏口にあたるロビーにあった巨大な鉄板彫刻は、Richard Serra というアメリカのアーティストの作品だ。これもダイナミックに渦巻いているのは、やはりコンセプトに従ったのだろうか。

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