2018年6月 4日 (月)

こいのぼり

300匹ものこいのぼりが大空間を群れで泳ぎ回るというインスタレーションが、先月になるが都内で行われていたので見に行った。

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これらは Adrien Gardere アドリアン・ガルデール というフランスのデザイナーによる空間設計だそうだ。彼はプロダクトなどもデザインしていたけれど、最近ではSANAA建築のルーブル美術館ランス別館のクールな展示( 過去の関連記事 )で有名になった。そういえば昨年、同じ場所でフランスの建築家によるインスタレーション展示があったけれど( 過去の関連記事 )、フランス人のプレゼンテーション能力は今の時代において価値が高まってきているのかもしれない。

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こいのぼりの群れは入口から入っていって、広いスペースの奥で大きく円を描いてターンして出口に向かう流れになっていて、人はその流れに沿って行けば一回り見て出ていける動線計画になっている。その円の中心には寝転べる大きなクッションがいくつも置かれていて、そこで群れを下から仰ぎ見ながら3Dサラウンドで設計された音響によって浮遊感漂う不思議な体験をすることができるようになっている。

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テキスタイルは全て須藤玲子というデザイナーが担当しているそうだ。カラーやパターンだけでなく、透けたものや厚手でゴワゴワのもの、クシャクシャなもの、もじゃもじゃのものなど豊かなテクスチャーのバリエーションを感じることができる。

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やっぱり錦鯉、というか赤いものが一番しっくりくる。この感覚は日本人だけなのだろうか?カッコいい。

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このインスタレーションの為に用意されたのは、国立新美術館の天井高8mという一番大きな展示室。その空間を存分に活かした展示になっている。一番低い群れは人の背丈よりも低く、しゃがんで通り抜けなければならない。

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入口付近の群れは白や生成りの明るい一団。テクスチャ勝負ということで、これはこれで見どころがあって好きだ。

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最後は黒っぽい一群が、光の差す出口の方に向かって去っていく感じ。君たち、ありがとう。さようなら。

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2018年5月16日 (水)

石の船

ロンドンのV&AでおなじみのVictoria and Albert Museum( 過去の関連記事 )の分館が、スコットランドに計画されている。しかもそれは V&A Dundee Museum of Design というデザインミュージアムで、設計は隈研吾 ( もうひとつのブログから )だ。

ミュージアムの分館というのは、欧州ではブームなのだろうか。ルーブルはSANAAによるランス分館( 過去の関連記事 )に引き続き、昨年ジャン・ヌーベル( 過去の関連記事 )によるアブダビ分館ができた。ポンピドゥー( 過去の関連記事 )の分館は坂茂だし、テートの分館( 過去の関連記事 )はヘルツォーク&ド・ムーロンだ。

さてこのミュージアム、都内で隈研吾の建築展をやっていて、そこで迫力ある大きなスケールの模型が展示してあった。ストストーンパネルを水平に積み重ねるというファサードが、あたかも岸壁をデジタルに抽象化したかのような印象だった。あるいは、このミュージアムがウォーターフロントに建てられることから、巨大な船をイメージしたのかもしれない。

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その一部は派手に裂けていて、外へとつながる動線となっている。このディテール以外は、外から見るとあたかも水辺に浮かぶ要塞のように見えるかもしれない。今年9月に開館とのことなので見に行きたい気もするが、島国UKとは言えスコットランドは遠すぎる。。。

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2018年3月12日 (月)

ウィンザーチェア

ロンドン西部にあるウィンザー城の周辺で、17世紀頃から作られ始めたというウィンザーチェア。二次大戦前のウィンザー朝の頃のスタイルを意味すると思っていたらとんでもない、もっと古い歴史があった。初期のものは、この写真にあるコームバックと呼ばれる櫛のような背もたれのものが多く、今でもこのスタイルは残っている。決して貴族や王室が使う華やかな家具ではなく、もともとは農民たちが生活のための実用品として作っていたそうだ。

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下の写真は、以前スウェーデンで見つけたコームバックのウィンザーチェアで、手前にある英国の伝統的なものを参考に、二次大戦後に若いデザイナーがロングライフの秘訣を探りつつ、ディテールをモダンにリ・デザインし製造されたものだそうだ。

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日本におけるウィンザーチェアは民具としての位置づけで、二次大戦後の民藝のムーブメントの一翼を担ったことで知られている。その推進役でもあった丸山太郎の活動によって、松本は日本製ウィンザーチェアの産地になった( 過去の関連記事 )。そして彼自身の民藝コレクションは松本民芸館という博物館に引き継がれ、その中にはアンティークの英国産ウィンザーチェアも多数含まれている。そのコレクションが昨年、都内の日本民藝館( もうひとつのブログから )で展示があったので見てきた。

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どれも作り手の工夫や思いやりが伝わる素晴らしいチェアで、心動かされるものばかりだった。もちろん詳細な解説付きの図録も入手した。五月の連休に松本に行くので、民芸館には是非とも立ち寄りたい。

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ちなみにこれは、我が家で毎日使っているボウバックのウィンザーチェア。年齢不詳だけど、100歳は越えているに違いない。これからもよろしく。

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2017年12月22日 (金)

森の国のクリスマス

皆さん、撮りますよ~、こっち向いてくださ~い!っていう感じの彫刻。右下に幼きイエスキリストがいる。これはワシントン・ナショナルギャラリー( 過去の関連記事 )で見つけた、中世の南ドイツの木彫。

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ちなみに正面から見るとこんな感じ。みんなバラバラ、好き勝手なことをしている。もちろん教会の祭壇に置かれていたものだろうから宗教としての主題に基づいた創作なのだけど、加えて人間としての表現が実に豊かだと思いませんか?これにはルネッサンスを生んだ人間性を回帰しようという時代的背景と、ドイツの田舎町という地域的な背景、そしてそこの深い森が育んだ精神文化と工芸技術が重なって生まれたのだろう。( 過去の関連記事

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2017年10月23日 (月)

ローランサン

マリー・ローランサンと言えば、グレーにピンクといったパステル調のかわいい作品が想起されるが、そんなイメージどおりの絵と数年前、絵画はあまり置いていないはずのパリ装飾芸術美術館( 過去の関連記事 )の一画で、ポツンと壁に掛けられているのに遭遇した。その時の一枚がこれだ。

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若い頃に見に行った蓼科高原のマリー・ローランサン美術館がいつの間にか閉館になっていて、今年の夏に赤坂のニューオータニ内で再開された。実は先日、たまたま近くの会社で所用があったので、毎度のごとく閉館間際に駆け込んだ。それでふと、この絵のことを思い出したわけだ。

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あまり彼女の生い立ちを知らなかったのだけど、赤坂の美術館の解説によるとパリでブラックやピカソ( 過去の関連記事 )らアーティスト達との親交の中で画家のキャリアをスタートしている。詩人アポリネールとも恋仲だったとの記述もあった。しかしその後、ドイツ人と結婚した頃に運悪く一次大戦が始まって、フランスにいられなくなって亡命生活となってしまった時期の作品は実に暗く、まるで別人の作風だった。戦後に離婚してパリに戻った頃から、時代の風潮もあったのだろう、彼女のカワイイ作風が炸裂している。そして老年に至るまでずっと、そのスタイルで作品を制作し続けた。

同世代の東郷青児もそうなのだけど、見方によっては作風がイラスト調、悪く言えば大衆的で、世間のアートの評価軸とは少し異なる世界に感じられる。これは、おそらく彼女の作品が高く評価されてこなかった理由のひとつなのかもしれないし、逆にカワイイものが好きな日本人に受け容れられやすかったのかもしれない。現にこの美術館は、ローランサンのコレクションでは世界最大だそうだ。

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2017年10月 9日 (月)

大工道具

ドイツの伝統的な木組みを再現した展示が、神戸の竹中大工道具館にあった。この複雑な形状は、どうやら単なる装飾的な意味合いだけではないようだ。( 過去の関連記事

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それを作るための古い大工道具たちも、すぐ横に展示してあった。( もうひとつのブログから

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鉋(カンナ)はこんな感じ。中央のものは、ミュンヘンの蚤の市で入手したものと似ている。( 過去の関連記事

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昔の鋸(ノコギリ)は糸鋸(イトノコ)のような形だったようで、張力によるテンションによって刃の長さを確保しているようだ。

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こちらはロンドンだけど、地下鉄のCharing Cross駅にはその土地のストーリーが描かれていて、そこには似たスタイルの鋸が登場している。

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2017年9月15日 (金)

公開制作

ギャラリーの一室がそのままアート作品になっているこれは、教室をモチーフにしたのだろうか、あるいは教育に対する何らかのメッセージなのか。壁一面が黒板になっている。

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そしてアーティストはこちらの方。

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そう、来場者が自由に参加でき、その変化していく様が作品そのものなのだ。参加型アートと言うよりは、公開制作に感覚が近い。何年か前、ポンピドゥーセンターにて。( 過去の関連記事

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2017年8月18日 (金)

ムーア好き

比較的あちこちで見る英国の彫刻家ヘンリー・ムーア( 過去の関連記事 )の作品。特に日本の美術館では当たり前のように目にするのは、もしかして日本人はムーア好き?

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彼の作品は抽象度合いが程よくて理解がしやすく、造形的にも優しい印象のものが多いので、見ていても楽しいものが多い。

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中にはこんなのもあったりする。確かに、カワイイもの好きの日本人には好まれるのかもしれない。

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2017年8月14日 (月)

ミュージアム巡り192 Levi's

ジーンズの Levi's は、ゴールドラッシュの最中に労働者向けのパンツをサンフランシスコで製造販売したのが始まりだそうだ。創業の Levi Strauss さんは、その名前からもイメージできるようにドイツ移民で、ニュルンベルクの北にある彼の生家は今ではミュージアムになっているそうだ。

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本社はやはりゴールドラッシュに沸いたサンフランシスコにあって、この春たまたまその建物の前にあるデザイン事務所を訪問したついでに立ち寄った。

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ロビーにはショップやカスタマイズのワークショップもあって、今風のクラフテッドなテイストだった。

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そしてここにはちょっとしたミュージアムもあって、その展示の目玉はアンティークのジーンズだった。こちらはボロボロのカーキ。

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そして初期の頃のジージャン(って今でも言うのかな?)、とは言っても確か二次大戦の頃だったはず。

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通常ジーンズを染める工程では大量の水を使うのだけど、ここはカリフォルニア、水の消費を抑えることは企業の美徳とのことで、その技術をアピールしていた。

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ところで、柳本浩市のコレクションを見に行った時に Levi's の商品ラベルを見つけた。いかにも古き良きアメリカンな感じなのは、狙ってコントロールしたものなんだろう。

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2017年7月21日 (金)

ジャコメッティ

イタリア国境に近いスイスの山村で生まれ、パリで活動したジャコメッティの企画展が、この夏に都内で行われている。A4サイズのパンフレットは、広げると縦長のポスターになるというちょっとしたアイディアのデザインで、彼の作品との相性も考えられていて素敵だった。

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図録は買わなかったけれど、前売り券を買うと立派な解説パンフレットがついてきた。この三人の男は、パリの街角を行き交う人々を切り取ったかのようなクールな作品だった。

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二次大戦をはさんだある時期、彼の作品は矮小化を続け、展示の中にはマッチ棒の半分くらいの彫刻(と呼ぶのかな?)まであった。中にはいい感じのものもあって、持って帰りたい衝動に駆られたくらいだ。

一方その反動もあってか、晩年には大型の作品も手掛けていて、見上げるような作品三点は公共の場に置く目的で制作されたこともあるのだろう、写真撮影が許されていた。その中のひとつ、この女性像は百済観音に通ずるオーラのようなものを放っていて、思わず拝みたくなった。

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彼は友人である哲学者の矢内原伊作(二人の交友を文脈的に捉えた企画展がかつて葉山であった)や、同じくアーティストである弟のディエゴ( 過去の関連記事 )など、身近な人たちをモデルにした作品を数多く制作している。モデルが少しでも動くと絶望の表情をしたそうだけど、まるでセザンヌにまつわる話のようだ。実際、彼はセザンヌの作品をこよなく愛していて、模写までしている。

この巨大な男の頭部もきっと、そういった中の誰かだったのだろう。対象の実体が浮かび上がるまで執拗にストロークを重ねた彼のスケッチの多くにあるように、実に重層的な表現だ。

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そしてパンフレットの表紙にもなっている、歩く人。わき目もふらずに、まっすぐに。いささか前のめりなその様は、まさに彼の生き様そのものではないか、と書くのは少々評論家気取りかもしれない。

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