2017年5月22日 (月)

リュトン

上野の東京国立博物館に展示してあった、中近東で発掘されたという紀元前の土器。造形的にも完成度が高いので驚きだ。持ち手が付いているけれど、コップだとしたらどうやって飲み物を入れて置くのだろう、もしかして酒を注がれたら置くことを許されないで飲み続けるしかないヤツ?と思って調べてみると、どうやらこれは儀式用の器で神聖な水(あるいは酒?)を入れるとヤギの口から流れ出るように穴が空いているとのこと。リュトンと呼ぶらしい。諸説あるそうなので興味のある方は調べてみては?( 過去の関連記事

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2017年5月17日 (水)

鼠色

グレーと言うよりは、最近あまり聞かない「鼠色」な感じの陶器たち。ドイツのアンティークの店先や博物館でよく目にするこれらの陶器は、英語的にはそのまんま Grey and Blue Stoneware とも言われている。それは Salt Glaze Pottery という古い製陶法のひとつで、焼成中に塩を投げ入れガラス質のコーティングをつくってツヤを出すというもの。

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いい加減な絵付けの我が家のこのジャーは、今では植木鉢になってしまっているけれど、ミュンヘン時代に蚤の市で買ったアンティークの Grey and Blue。

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そして昨年訪れたワシントンDCのミュージアムでも、似た鼠色の陶器が見られた( 過去の関連記事 )。これもきっと、欧州から持ち込まれた技術のひとつだったのだろう。

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かつてミュンヘンで見た古い陶器製のビアマグにもあったけれど( 過去の関連記事 )、これら陶器の文字の部分も、型押ししたあとに色を入れて拭き取っているのがわかる。

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2017年5月 3日 (水)

ラスコー

フランス南西部にあるラスコー洞窟は、クロマニョン人(実にフランスっぽい名前だ)が2万年前に壁画を描いたことで有名だ。その珍しい展覧会が上野の国立科学博物館で行われた。

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壁画は、1940年その洞窟に「落ちた」飼い犬を探していた少年が偶然発見したそうだ。今では高松塚古墳のように損傷が激しくなったので保存の為に閉鎖されているが、この展覧会では3D測定したデータをもとにミニチュアで再現されていた。洞窟という言葉からイメージするような山の中腹に水平に大きく空いた穴ではなく、地面から地下に向かって降りていく複雑にうねった狭い空間だ。そう、少年の犬は「落ちた」のだ。

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そして3Dでミリ単位でリアルに再現した壁画が展示されていた。洞窟を模した暗さと狭さを演出していて、まさにエクスペリエンスだ。

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地下に複雑に入り組んだ洞窟の、その暗黒の奥深くにかがり火を頼りに潜っていった、そのモチベーションは一体何だったのだろうか。決して人に見せるためのものではなく、ましてや遊びや気まぐれなどではなく、特別な理由と明確な意図と固い決意が無ければ実行しなかっただろう。動物が多く描かれていることから、狩猟の成功と豊猟に対する「祈り」というキーワードが説明に使われていたけれど、本当にそうなのだろうか。

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彩色された壁画も、よく見るとアウトラインが線刻されていることがわかる。そして現代的な素描のような線画もある。これは川を泳いで渡る鹿の群れ、と解説にあった。2万年前ですよ、これ。

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トリ人間と呼ばれている横たわった像も描かれていて、その傍には鳥がデザインされた「投槍器」という槍投げをエンパワーする補助具が落ちている。確かにこれは、様々な推測や学説を生み出すに十分なストーリー性を持っている。

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2017年1月25日 (水)

ゴーレム

ゴーレムって知ってますか?欧州の神話に出てくる泥人形で、フランケンシュタイン的な怖さを持っているそうだ。命令に従う人形、ということで元祖ロボットのような存在ということなのだろう、博物館でロボットのおもちゃと同じカテゴリーに展示してあった。ちょっと違和感というか、まわりと馴染んでない感じがするけれど、その存在感は抜群だった。( 過去の関連記事

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2016年12月14日 (水)

リバティベル

自由の象徴、Liberty Bell リバティベル。そう、1776年にアメリカの独立宣言が読み上げられた時に鳴らされた鐘だ。フィラデルフィア( 過去の関連記事 )の州議会跡地に立つ記念館に、半ば国宝的な扱いで展示されていた。

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このクラックと修復痕の痛々しい鐘は、実はロンドン製。やはり品質に問題があったのだろうか。ドイツ製にしておけばよかったのに。( 過去の関連記事

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現在、隣にある旧州議会の鐘楼に吊るされているものは、今のエリザベス女王が何十年か前に訪問した時にお土産として贈呈した、ロンドンの同じメーカーによる鐘だそうだ。遠くて見えないけれど、きっとオリジナルと同じ形にちがいない。

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2016年10月14日 (金)

ミュージアム巡り190(US編) 上流階級

ワシントンDCのホワイトハウス近くの、省庁が立ち並ぶ地域の一角にある DAR Museum。DARというのは Daughters of the American Revolutions の略称だそうで、アメリカ建国理念に賛同する女性の協会、的なNPOのようだ。ざっくり言ってしまうと「政治家や上級役人の奥様方の集まり」と言っていいだろう。

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従って展示はいたって上流階級な感じ、そしてもちろん女性の視点を強く感じる。中でもお客様を招く応接室は特にゴージャスだった。ちなみにここは、おそらく昔の官公庁だった建物で、その各部屋に再現された個人邸の部屋を見て回るという、ちょっと風変わりな施設だった。

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どの部屋もフェミニンながら、やっぱり高級な感じ。しかし家具などは一体どこ製で、どこのスタイルなのだろう。やっぱり欧州を手本に米国で作られたものなのだろうか。

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そしてティーセットもマダムたちには欠かせないようだ。これは1792年の書き込みがある。確かに古そうだけど、それでいてしっかりとラブリー。( 過去の関連記事

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この持ち手がバンブー巻きなのは珍しいかも。

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そして主婦のたしなみ、クロスステッチ。全米各州のマダムたちから集めたのだろうか、まさに寄せ書きならぬ寄せステッチ。

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その中でワシントンDCはと言うと、もちろんジョージ・ワシントン( 過去の関連記事 )。ちょっと怖い感じだけど、緻密に作ってある。

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そしてベッドルームの再現もあった。さすがにプライベートなスペースは家庭的でホッとする。手作りっぽい子供用のパッチワークキルト( 過去の関連記事 )や、寒さをしのいだのだろうベッドウオーマーがあったりと、時代や地位を超えた母の愛を感じる。

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2016年9月21日 (水)

ミュージアム巡り188(US編) ジョージタウン

ワシントンDCのジョージタウンと言えば、多くの政治家を輩出してきた同名の大学で有名。初代大統領が就任した年に設立、だそうなので歴史のある大学だ。街は小さいけれど、ボストンに少し似た印象の、歴史と味わいを感じる素敵な街並みだった。

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その中でも、ひときわ古いこの歴史的建造物は Old Stone House と呼ばれる民家で、今では整備され見学できるようになっている。

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もともとは18世紀の職人の家だったそうで、石造りで質実剛健な印象だ。

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中の部屋は、当時の生活が再現されていた。古き良き時代のアメリカ、そんな感じ。掲示してある解説によると奥に見える大きな時計は、一時期この家の通りに面した部屋を借りて時計屋をしていた人が作って置いていたという、まさにこの場所オリジナルのものだそうだ。

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家具も年代物に違いない。独特の風格を感じる。

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展示されている家具や古道具は、ほぼ全て地元の人たちからの寄付だそうだ。どれも味わいがあって素敵だった。

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2016年9月 2日 (金)

ミュージアム巡り186(US編) アメリカンアート

米国ワシントンにあるスミソニアン博物館群の、たぶんこれでラストのレポートは、その名もズバリ American Art Museum。古い建物だけどコートヤードには写真のようにモダンな屋根があって、この日は何かイベントがあるようで、その準備をしていた。欧米のこういった半ば公共的な場って何かとパーティなどに活用されることが多いけれど、日本でももっとあっていいと思う。

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さて美術館。これらは西部開拓時代に大陸を巡り、インディアンの風俗を描き続けた George Catlin という画家によるもの。

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例えば衣装や化粧、髪型など、今は消えてなくなってしまった部族の風俗も描かれているに違いない( 過去の関連記事 )。おそらく写真も無かった時代なので、これは民俗学的価値も高いのだろう。

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そして印象派のようなこのタッチは、それもそのはず「アメリカ印象派」というジャンルがあるそうで、その代表的な画家 Childe Hassam チャイルド・ハッサム によるもの。メアリーカサットとも交流があったというが、フランスで活躍した彼女とは違ってメイン州など東海岸を中心に活動したそうだ。

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やはり米国独自のアートは、二次大戦後のモダンアートからだと思う。その代表選手のひとりが、このエドワード・ホッパー。「ナイトホークス」なんかが有名だけど、こういった映画のワンシーンのような雰囲気のある作風が、自分も若い頃は大好きだった。

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たとえそれが人物が描かれていない風景だとしても、彼の作品の場合はどことなくストーリーを感じるから不思議だ。何かが起きる予感、あるいは何かが起きた余韻。

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そしてこのミュージアムは絵画だけでなく、家具や生活道具などもコレクションの対象になっているのがうれしかった。例えばこういったアンティークのシェイカー家具。おそらく今でも全く同じデザインで作られているのだろう。

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かなり前だけど、マサチューセッツのハンコックにあるシェイカービレッジに行ったことがあるが、そこで買ったオーバルボックスと同じようなものも展示してあった。

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アンティーク・キルトの世界も奥深い( 過去の関連記事 )。これはベツレヘムの星、英語で言うと Guiding Star というキリスト教的に意味の深いパターンだ。( 過去の関連記事 )。

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その他、生活道具もあれやこれやあって興味深い。このフォークなんて、世界共通だ。( 過去の関連記事

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そして屋根裏部屋、と呼ぶにはあまりに立派な最上階。元々は特許庁の建物だったそうなので、おそらく資料の保管スペースだったのをリノベーションしたのだろう。

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ここは未整理のアメリカン・アンティークの宝庫。とりあえず見て回れるようになっているので、時間さえあれば探検のしがいがある。

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いろいろあるけど、個人的にはプリミティブなものがイイ感じ。この鳥さんは、欲しい!

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これはロボット?ではないようですが、ブリキのオブジェなのだろうか。もしかするとパイプとかの商品サンプルなのかもしれない。いずれにせよ無垢な感じがとても良い。

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2016年7月13日 (水)

ミュージアム巡り179(US編) アメリカのプロダクト

スミソニアンのアメリカ歴史博物館 National museum of American history は、アメリカ400年の歴史を網羅的に紹介する展示だ。ざっくり言うと、欧州の社会文化の持ち出しから始まり、戦争に次ぐ戦争の歴史、そして近代になって開花した独自のテクノロジーとカルチャー、といったところだ。多様な側面があっていろいろ感じることもがあったが、このブログではプロダクトの歴史にフォーカスしたい。

まずは「発明王」エジソン。単に電球を発明しただけでなく、それを大量生産するしくみと、そのための発電と送電のしくみを考えたところがすごい。今で言う起業家の元祖なのだろう、彼は後にGEとなる会社の創業者でもある。

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そして数々のトースターたち。様々なメーカーが、あの手この手の焼き方を提案している。朝、手軽にトーストを焼くことを当時の主婦が切望していたということなのだろう。

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これは鉄の扇風機たち。どれも重たそうで暑苦しい。そんな中で奥に見えているGEの扇風機なんかは、デザインという意味で相当に目を惹いたに違いない。まさにプロダクトデザインが経営的にも重要になっていく時代だ。

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そしてこれはドライヤー。机上に置く形が基本で、手でも一応持てる工夫がされているように見えるけれど、それでも重かったのだろう。

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蒸気機関車の歴史は、もちろん英国が先輩。それでもアメリカ大陸に持ち込まれてからは、独自の進化をしたとのことだ。しかも広大な土地に路線のネットワークを作るとなると、大量のレールを生産しなければならなかった。そこで活躍したのが「鉄道王」かつ「鉄鋼王」と呼ばれ、後のUSスチールの礎を築いたスコットランド移民のカーネギーだ。

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車の歴史についても欧州が先輩。しかし「自動車王」ヘンリーフォードが確立した流れ作業による大量生産システムによってT型フォードが生まれ、低価格化して爆発的に大衆に広がっていった点がアメリカ的である。

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時代は少し下るが、映画にもなった幻のタッカーも展示してあった。輝く三つ目が個性的だ。

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アメリカのパーキングメーターは、最近までこんなだったなあ。

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そして今回、Patent model (特許模型)という分野があることを知った。こちらは風車の特許申請用模型。この手のものはアンティークのコレクションとしての対象になっているに違いない。これは欲しい。

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こんなコーヒーのフタも、収集すればミュージアムに展示できる。これも特許回避によるバリエーションと考えると、商業的でアメリカ的。これは欲しくない。

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そして商業キャラクターたちも、米国文化の一端と言っていいいと思う。このMr. Peanut はスナックの会社の歴史的キャラクターで、今でも現役。

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テレビ番組だけど、Sesami Street も多くのキャラクターを生み出した。こちらは小柄なエルモ。個人的にはクッキーモンスターが好きだけど。

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そしてこれは、世界最初のマウス、ですと。プロトタイプなのだろう、なんと木製だ。

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そしてマウス(ネズミ)とネズミ捕りの歴史っていう、真剣なジョークもアメリカ的。

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2016年7月 8日 (金)

ミュージアム巡り178(US編) 先住民族

ワシントンのスミソニアン博物館群の続きは、アメリカのインディアンについての博物館 National Museum of the American Indian。欧州からアメリカ大陸への入植が増える17世紀以降、彼らは多くの先住民族を追放あるいは虐殺して土地を奪っていったことは、残念ながら隠しようのない事実だ。しかもその数たるやアメリカ大陸全体では数万人レベルではなく何千万人にも及ぶという。この歴史を確実に残し彼らの文化を伝承していくのが、この博物館を作ったモチベーションに違いない。

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うねるような曲面を持つ独特のデザインの建築はインディアンの建築家によるもので、彼らの思想が取り入れられているそうだ。

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その内部もやはり、うねっている。広い空間ではあるものの、ここでは展示そのものはそんなには多くなく、むしろワークショップやアクティビティなどのスペースに多くのスペースを割いている。

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このかわいい模様のカゴはインディアンの手工芸。このようなバスケタリーは人類共通のプリミティブな生活民具として世界中どこにでもあるので、逆に地域ごとの材料や編み方、模様や形などの差異に注目すると興味深いものがある。( 過去の関連記事

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こちらは東海岸の部族による、小さな貝をビーズにして編んだベルト。アメリカ建国間もない頃のものだけど、彼らにとって新しい文化であったろう数字やアルファベットが表記してある。

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この木製のカヌーの表面には樺の樹皮のようなものを使っている。北東部の落葉広葉樹の森の部族のものだ。静かな河川や湖沼で複数人が移動する目的のカヌーだろう。

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北方のイヌイットたちの使っているカヤックはシャープでモダンな印象。アザラシの皮を張った、耐水性があって超軽量な一人乗りだ。実際にスピードも出るに違いないが、もちろん狩猟などの要求に基づいて進化したものなのだろう。

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